「走行距離課税って本当に始まるの?」「自動車税とどう違うの?」──そんな疑問を持つ方が増えている今、政府が検討を進めている“走行距離課税”制度について、最新情報とともに徹底解説します。
この記事では、制度の概要、導入検討の背景、今後のスケジュール、ドライバーへの影響、そして課題点や反対意見まで、初めて聞いた人でも理解できるように網羅します。
走行距離課税とは?
走行距離課税とは、車の所有や重量ではなく、「実際にどれだけ走ったか(走行距離)」に応じて税金を課す制度です。英語では「Mileage-Based Road User Charge(MBRUC)」などと表現され、欧米ではすでに一部導入が始まっています。
日本では、ガソリン車が減り、ガソリン税収が減少していることを背景に、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド)を含めた「公平な課税のあり方」として走行距離課税が議論されているのです。
なぜ今、走行距離課税が議論されているのか?
EV時代における税収減
日本の道路整備財源の多くは「ガソリン税」に依存しています。ところがEV化が進むと、ガソリンを使わない車が増え、税収が減ってしまいます。
- 2024年度:ガソリン税収は前年より約1,000億円減少
- EV販売比率:新車販売の約20%に上昇(2025年見込み)
このままでは道路整備や維持管理の予算が確保できなくなる恐れがあり、その対策として「走った分だけ負担する」という公平な税制度への見直しが求められています。
重量税や自動車税の限界
- EVは車重が重くても税金が安い場合がある
- 車を所有しているだけでは道路を使っていない人も課税対象
こうした矛盾点を是正するため、「利用者負担の原則」に基づいた制度設計が求められているのです。
いつから導入されるの?政府のスケジュール案
2024年現在、走行距離課税は国土交通省・総務省が合同で制度設計を検討中です。具体的な導入時期は明言されていませんが、以下のようなスケジュールが想定されています。
年度 | 内容 |
---|---|
2023 | 技術的課題・法的課題の洗い出し |
2024 | 有識者会議で制度案を検討 |
2025 | 実証実験の開始 |
2026以降 | 一部地域での試験導入〜全国展開の可能性 |
ドライバーへの影響は?
EV・PHEVユーザー:増税になる可能性
現状ではガソリン税をほぼ負担していないEVユーザーも、走行距離に応じて課税されることになれば**「実質増税」**となる可能性があります。
走行距離が長い地方住民ほど負担増?
- 地方では通勤・通学・買い物に車が必須
- 都市部と違って公共交通が充実していない
こうした地域格差に対して「配慮が必要」との意見も多く、距離ベースだけでなく所得や地域ごとの軽減措置も検討され始めています。
法人・物流業界への影響も大きい
- 配送・営業車両は1日100km以上走ることも
- コスト増が商品価格に転嫁される恐れも
筆者も物流業界の知人から「軽EVに変えても結局税金がかかるなら意味がない」との声を聞きました。
どうやって課税するの?技術的な仕組み
現時点で議論されている技術案は以下の通り:
- 車検時の走行距離申告制(簡易)
- GPSなどによるリアルタイム走行記録(高精度)
- 車載端末によるデジタル計測と自動申告
ただし、
- プライバシー保護の問題
- 不正防止の仕組み
- 導入コスト
など、解決すべき課題は山積しています。
反対意見・懸念の声も多い
国民からの懸念は主に以下の4点:
- 「二重課税になるのでは?」(自動車税+走行距離課税)
- 「車がないと生活できない地方が損をする」
- 「監視社会になるのでは?」(GPS追跡への不安)
- 「本当に公平な制度なのか?」
筆者個人としても、EVへの乗り換えを促進しながら新たな税負担を求めるという矛盾を感じずにはいられません。
ただし、道路の維持やインフラ整備にはお金がかかるのも事実。**「誰がどう負担するのが本当にフェアか」**という議論が、今まさに必要とされています。
海外の導入事例はどうなっている?
アメリカ・オレゴン州
- 1マイル走行あたり1.8セント課税(任意)
- 代わりにガソリン税を免除
ドイツ
- 高速道路での大型車走行に対する距離課税制度
オーストラリア
- EV・PHEVに対してkm単位で課税(州によって異なる)
これらの国では制度の透明性や徴収システムの簡素化が評価され、段階的に広がりつつあります。
結論:走行距離課税は「未来の公共財をどう支えるか」の問い
走行距離課税は、「クルマを持つ人に新たな負担が増える」として反発もありますが、見方を変えれば「公平な負担でインフラを維持する」仕組みでもあります。
筆者としては、単なる“増税”としてではなく、
- 誰がどれだけ道路を使っているか
- 誰がどこで困っているか
- どこに公共のお金を使うべきか
といった本質的な社会の議論を深めるきっかけとして注目すべき制度だと考えています。
今後の制度設計と国民的な議論の行方に注目していきましょう。