スズキの人気軽ワゴン「エブリイワゴン」が、ついにフルモデルチェンジを迎える。
現行型の登場からおよそ9年。長年の改良を経て、次期モデルは安全性能・電動化・デザイン性すべてを一新する一台になる見込みだ。
この記事では、2026年に登場が予想される新型エブリイワゴンの最新情報を、開発動向や市場背景とあわせてわかりやすく解説する。
現行モデルの熟成と“モデル末期”の兆し
現行モデル(DA17W型)は2015年に登場。
以来、2019年・2022年・2024年とマイナーチェンジを重ねてきたが、プラットフォームや基本設計は当時のままだ。
2024年の改良でCVT化やLEDヘッドランプ採用、安全装備の追加が行われたものの、構造的な刷新には至っていない。
スズキが次に打つべき一手は、単なる改良ではなく「設計思想そのものの更新」。
ユーザー層も変化している。
軽ワゴンが商用だけでなく、車中泊やレジャー・ファミリー用途に広がる今、エブリイも“使える車”から“選ばれる車”への転換が求められている。
発売時期は2026年前半が有力
業界関係者の情報によると、新型エブリイワゴンは2026年春〜初夏に正式発表される可能性が高い。
2025年内に試作車が完成し、年末にかけて販売店向け説明会が行われるという。
また商用EV「e-エブリイ」との共同開発も進行しており、EV化を視野に入れた“次世代軽ワゴン”として登場する見込みだ。
発売のタイミングは、スズキが掲げる「2030年までに軽自動車の電動化率60%」というロードマップの中でも重要な位置づけになる。
新開発プラットフォームと安全性能の進化
次期型エブリイワゴンの最大の注目点は、新開発のプラットフォームにある。
軽量化と剛性向上を両立するため、スズキは高張力鋼板(ハイテン材)を積極採用した新モジュラーフレームを開発中とされる。
キャブオーバー構造のまま衝突安全性能を高める設計が採用され、フロント衝突時の変形を抑制。
また側面衝突への対応も強化され、側方エアバッグやカーテンエアバッグの標準化も見込まれる。
安全装備面では、次世代「スズキセーフティサポート」を搭載予定。
ミリ波レーダーとステレオカメラを組み合わせた新システムにより、夜間の歩行者検知や高速道路での全車速ACC(アダプティブクルーズコントロール)にも対応する見込みだ。
パワートレイン:ガソリン×EVの二本立てに
エンジンモデルは、改良型R06Aターボ+マイルドハイブリッド(ISGアシスト)の構成を継続採用する見込み。
燃費性能はWLTCモードで20km/Lを超えると予測される。
EV版(e-エブリイ)は、商用モデルをベースに航続距離200〜250km前後を目指す。
急速充電30分で80%まで充電可能とされ、軽EVの中では実用性が高い。
EV専用プラットフォームではなく、モジュラー化された構造を採用することで、生産コストと車体剛性をバランスさせている点もポイントだ。
これにより、同一ラインでガソリン車・EV車の両方を生産できる体制を構築しているという。
外観デザインは「シンプルモダン」へ刷新
現行モデルが“商用然とした実用デザイン”であったのに対し、新型は都市的で洗練された印象へと変化する見込みだ。
ヘッドライトは縦基調LED+シグネチャーランプ構成となり、フロントグリルは水平基調で統一。
サイドラインは現行よりもフラットで、全体的にクリーンな印象を与える。
リアは一文字型テールランプが採用されるとの情報もあり、軽ワゴンの枠を超えたデザインになるだろう。
ボディカラーはサンドグレーやアーバンカーキなどのトレンドカラーが追加される予定で、アウトドア・街乗りどちらにも馴染む仕上がりが期待される。
インテリアは「使いやすさ+質感」へ進化
インテリアデザインも大幅にリニューアルされる見込み。
ダッシュボードは水平基調を強調し、センターには大型ディスプレイを搭載。
スマートフォン連携やボイスアシストなど、コネクテッド機能も強化されるだろう。
メーターはデジタルとアナログの融合型で、従来の実用性を保ちつつ先進的な印象を与える。
素材面では、ドアトリムやアームレストにソフトパッド素材が採用され、上質感が大幅に向上。
また、車中泊や荷物積載を考慮した多彩なシートアレンジを継承し、使い勝手の良さも健在だ。
快適装備の拡充と静粛性の向上
フルモデルチェンジでは、快適性も大幅に進化する見込みだ。
新開発のエンジンマウント構造と遮音材の強化により、キャブオーバー構造でも静粛性を確保。
エアコンにはナノイーX機能やオートデュアルモードを設定し、長距離ドライブでも快適な環境を実現する。
USB電源ポートやワイヤレス充電機能の増設、リアクーラーの改良など、細部に至るまで現代的な快適装備が盛り込まれるだろう。
EV版との違い:商用と乗用の境界を曖昧に
商用EV「e-エブリイ」との違いは、エクステリアと内装の質感に現れる。
e-エブリイが実用重視のシンプル設計であるのに対し、新型ワゴンはファミリー・レジャー向けに上質な仕様へ。
また、航続距離・モーター出力・バッテリーマネジメントの制御も異なる可能性がある。
EV専用モデルでは、急速充電ポートの位置やバッテリー冷却機構が刷新され、より静かな走行フィールを実現する見込みだ。
競合モデルとの比較
ホンダN-VAN、ダイハツアトレーEV、日産クリッパーリオなど、軽ワゴン市場の競争は激化している。
N-VANはデザイン性と積載効率、アトレーはEV化でリードしているが、新型エブリイワゴンはその両方をバランスよく抑える立ち位置にある。
特に、走行安定性と積載性の高さ、低価格での電動化対応は他社にはない強みとなるだろう。
「過剰でも不足でもないちょうど良さ」こそ、スズキが得意とする領域だ。
デザイン思想:無駄を削ぎ落とした“実用の美”
新型エブリイワゴンのコンセプトは、使いやすさと美しさの融合。
無駄を削ぎ落としたシンプルな面構成、機能をデザインに溶け込ませる手法、そして人の動線を意識した空間設計。
それは、過度な装飾や演出ではなく“暮らしの延長線上にある車”を目指したもの。
日本のモノづくりらしい「控えめな上質さ」が新型には感じられるだろう。
今後の展望とユーザー層の拡大
次期モデルは、単に働く人の車ではなく、暮らしを楽しむ人の車へ進化する。
車中泊、キャンプ、ワーケーション、送迎用途など、軽ワゴンの役割は多様化している。
新型エブリイワゴンは、そうした“複数の顔を持つ車”として再定義されるはずだ。
安全・快適・環境性能を高次元で融合させながらも、軽自動車らしい手の届きやすさを維持している点が最大の魅力といえる。
まとめ:エブリイの次の10年をつくる一台へ
2026年に登場が予想される新型エブリイワゴンは、軽自動車の常識をもう一段上のレベルに押し上げる存在になるだろう。
EV化、安全性能の進化、デザインの刷新──そのすべてが、“次の10年”の軽ワゴン像を形づくる。
これまで「仕事の道具」として愛されたエブリイは、これから「暮らしの相棒」として再び輝く時代を迎える。
そして、誰もが日常の延長で“少し特別な時間”を過ごせる車として、新型エブリイワゴンの誕生が待たれている。