「新型エルグランド、ダサくない?」
2025年秋、SNSを中心に突如拡散したスクープ画像が、ファンの間で賛否を巻き起こしている。
その画像には、従来のエルグランドとは似ても似つかないアグレッシブなデザインが映り込み、「迫力はあるけど品がない」「アルファードの二番煎じ」といった辛口コメントが相次いだ。
しかし、そこに込められた意図や戦略を読み解けば、“ダサい”という単純な言葉では片づけられない背景が見えてくる。
本記事では、LIB CAR DEPT.編集部がスクープ画像の信憑性・デザイン理論・市場戦略の三方向から、新型エルグランドの“真実”を徹底検証する。
スクープ画像が引き起こした混乱
2025年9月ごろから、自動車系SNSや掲示板で「新型エルグランドのスクープ画像」とされる写真が急速に拡散された。
そこに写るのは、巨大グリルと極端に高いルーフライン、そして強調されたメッキライン。
一見して「これまでのエルグランドとは違う」と誰もが感じるほどのインパクトを持っていた。
問題はその真偽だ。
複数の画像は中国・タイの自動車フォーラムで最初に出回っており、CG合成やファン制作の予想レンダリングである可能性が高い。
それでも、「日産の公式デザイン資料が流出した」とする匿名投稿が信憑性を高め、ファンの間で議論が加熱している。
「ダサい」と言われる理由を分解する
LIB CAR DEPT.では、出回っている画像と既存の車体構造情報をもとに、“なぜダサく見えるのか”をデザイン理論の視点から整理した。
批判の多くは、主に4つの観点に集約される。
1. バランスを欠いたプロポーション
ルーフが高く、フロントノーズが短く見えるため、全体の比率がアンバランス。
いわゆる「腰高感」「寸詰まり感」が強く、伸びやかさよりも重たい印象を与える。
これは空力性能や車内スペース確保のための設計上の結果とも考えられるが、視覚的には“威圧感が過ぎる”という反応につながっている。
2. フロントマスクの主張過多
スクープ画像で特に目を引くのが、グリルの巨大化とライトデザインのシャープ化だ。
メッキフレームとクロームバーが幾重にも重なり、中心に日産エンブレムが鎮座。
その造形は確かに迫力があるが、ユーザーからは「品より押し出し感」「高級感より商業車っぽい」と感じられてしまった。
一言でいえば、“静的な美しさ”よりも“動的なド派手さ”に振りすぎているのだ。
3. キャラクターラインの不統一
ボディサイドの線が複雑に交差しており、面構成のリズムが不明瞭。
とくにリアフェンダー付近のラインが前後で途切れるように見えるなど、視覚的に“つながりの悪さ”を感じさせる部分がある。
デザイン専門家からは、「仮レンダリングの段階では造形データが未統一のことが多く、現段階では判断できない」との指摘もある。
4. “顔が主役”すぎるアンバランス感
顔の印象があまりに強く、ボディ全体が追いついていない。
このような“前面過剰デザイン”は、近年のトヨタ系ミニバンにも見られる傾向だが、日産ユーザーが求める「上品なスポーティさ」とはややズレがある。
“重厚で静かな存在感”を好むエルグランドファンにとって、この変化は違和感そのものだ。
スクープ画像は本物か?見分ける3つの着眼点
スクープ画像が本物なのかCGなのかを見極めるには、次のポイントを押さえておく必要がある。
光と反射の整合性
リアルな撮影では、金属パネルに映る光源や背景が自然に連動する。
しかしフェイクCGでは、光の反射や影の方向が一致しない場合が多い。
今回のスクープ画像の一部でも、フロントバンパー上の反射光が左右非対称で、「レンダリング特有の補正」とみられる部分が確認された。
ディテールの解像度
ヘッドライトやウインカー内部の構造描写が曖昧なものは、レンダリングの可能性が高い。
実車撮影では、ユニット内部のLED基板やリフレクターが明確に映り込むが、予想CGでは塊のように処理されているケースが多い。
背景との境界
ボディと背景の境目がぼやけていたり、路面の影が薄すぎる画像も要注意だ。
こうしたケースでは、AI補正や画像合成が使われていることが多く、いわゆる「生成系フェイクスクープ」の典型例だ。
“ダサい”デザインをあえて採用する可能性
仮にこのデザインが実際に採用されるとしたら、それは単なる失敗ではなく、明確な戦略意図があると考えられる。
LIB CAR DEPT.編集部は3つの仮説を立てた。
1. 市場で埋もれない“存在感”の再構築
アルファード/ヴェルファイアの独壇場を打破するには、日産として「目立つデザイン」である必要がある。
特にミニバン市場では、“静かな高級感”よりも“街中で一目でわかる存在感”が求められる。
いわば「美しさ」よりも「記号性」で勝負する方向へ舵を切った可能性がある。
2. 海外市場重視の“グローバル顔”
中東・アジア・南米市場では、メッキや立体的な装飾を“高級感”として評価する文化がある。
今回のスクープ案がアジア圏の需要を見越したデザインであるなら、日本の感覚で“ダサい”と切り捨てるのは早計だ。
3. 電動化パッケージによる制約
次期エルグランドはe-POWERまたはPHEV化される可能性が高い。
その際、バッテリー配置や衝突安全構造の変更により、従来の低重心フォルムを維持するのは難しい。
結果として、ボンネット短縮・キャビン拡大・ルーフ高上昇が起き、“見た目の違和感”が増したのだろう。
予想スペック・発売時期・価格帯まとめ
- 発売時期:2026年後半〜2027年初頭
- 駆動方式:e-POWER+ハイブリッド構成
- 出力:280〜320ps前後
- 駆動:FF/4WD両設定
- 価格帯:550万円〜850万円(最上級グレード900万円台)
- 主な競合:アルファード/ヴェルファイア/オデッセイ e:HEV
同クラスでは走行性能と静粛性が鍵となり、デザインが購買決定要因になる割合は約6割。
つまり「第一印象=勝敗」を左右するため、デザイン冒険はリスクと同時にチャンスでもある。
SNS・ユーザー反応:「ダサい」「でも気になる」
実際の反応を拾うと、否定と期待が入り混じっている。
- 「このフロントは無理。エルグランドの品が消えた」
- 「でも、こういう“攻めた”日産が戻ってきたのは嬉しい」
- 「どうせ実車で見たら印象変わるパターン」
- 「アルファード一強に風穴を開けてくれそう」
賛否の熱量は、むしろ注目度の高さを証明している。
トヨタの王国に挑む“話題性”こそ、日産が最も狙っているポイントだろう。
LIB CAR DEPT.の見解:デザインは進化の痛みを伴う
クルマのデザインは、批判を恐れていては進化しない。
「最初は違和感だったが、時間が経つと評価が変わる」という事例は山ほどある。
初代プリウス、初代キューブ、現行クラウン…。すべて登場時に「ダサい」と言われたが、いまや時代を象徴する存在だ。
今回の新型エルグランドも、“ダサい”とされる今こそ、変革の真っ只中にいるのかもしれない。
LIB CAR DEPT.編集部としては、日産が長年の“おとなしい路線”を脱し、再び挑戦的デザインに振った点を高く評価したい。
次期型が正式発表される2026年には、内装・走行フィール・テクノロジーまで含めた「総合的な上質」を再定義するモデルとなるはずだ。
結論:ダサいのか、革新的なのか。それを決めるのは“目の前の実車”
スクープ画像だけで新型エルグランドを判断するのは危険だ。
なぜなら、デザインの印象は写真や角度によって大きく変わるからだ。
もしこの「ダサい」と言われるデザインが本物なら、それは単なる失敗ではなく、“静から動”への転換宣言なのかもしれない。
日産は再びリスクを取った。その姿勢こそが、ブランド復権への第一歩だ。
LIB CAR DEPT.では、今後も試作車・公式発表・実車取材を通して、新型エルグランドの「真の姿」を追い続ける。
“ダサい”と笑うか、“挑戦だ”と称えるか――。
その答えは、あなたの目で確かめてほしい。